2016年3月2日水曜日

KYOCERA Finecam SL-300R Stream Shot


京セラがまだカメラ事業を行っていた頃に発売したスイバル式デジタルカメラ Finecam SL-300Rです。KYOCERAブランドのデジタルカメラは撤退して随分時が経っているため数がかなり減っていますが、特にスイバル式デジタルカメラそのものがほぼ絶滅状態となってしまいました。
このFinecam SL-300Rは期待されて登場してきた京セラが独自に採用したとされる高速画像処理エンジンであるRTUNEを搭載しており、エンドレス連写(SDカードの容量がなくなるまで連写)が出来たり、本体のUIが非常に高速だったりしましたが電池消費が非常に激しいものでした。

購入価格は525円
ハードオフのジャンクで500円ジャンクとしては珍しくガラス棚入りでACアダプター、説明書、でんちが付属していました。

この個体はなぜか花弁がいっぱいな模様になっていますがシールを張られているみたいです。KYOCERAロゴがあるので純正品には間違いなさそうですが一体何のシールなのかはわかりません。
KYOCERAのデジタルカメラというだけではなくスイバル式そのものが現在では珍しいため、観光地などで撮影をしていたら結構注目されます。スペックは320万画素に光学3倍ズームという何ともないものですがスイバル式というのはやはりかなりの特長になっていたのでしょう。

KYOCERA   Stream Shot
なおStream Shotというのは当時のカタログに記載されていたRシリーズ(Finecam S5R /S3R/SL300R)の共通のキャッチコピーですが公式サイトなどでは使われた跡がありません。



裏面は手堅くまとまっていると思ったら、結構個性的なデザインです。
KYOCERA  Finecam SL-300R

液晶モニターは時代が時代なので非常に小さく、黒い枠が大きいのでなおさら小さく感じます。一般的なデジタルカメラのUIとは全く異なり、モードダイヤルなどはなく左右ボタンによって再生・設定などのモードを切り替えます。前述の通り高速処理エンジンであるRTUNE搭載なのでモード切替えや再生・拡大などの処理が非常に高速であり、スピードだけならば現在の機種と同じくらいの速度かもしれません。

撮影時のUIも京セラオリジナルのものでマクロがシーン一覧にあったり、露出がメニューを開かないと調整できないなどと結構面倒です。撮影時の下ボタンはプレビューに割り当てられていますが左右が何もなしなのでISOや露出くらいは割り当てることもできたかもしれません。そして、かなり不満なのはフラッシュの設定をAUTOモードでは忘れることでしょうか。この機種は決して電池持ちが良いものではなくフラッシュの無駄打ち・無駄チャージは避けたいものですが、起動時に必ずフラッシュチャージすることになります。ズームは一般的なシーソー式ボタンです。
そして通常のコンパクト形状のS一桁シリーズよりはマシと思われるものの絶望的に持たないとされる電池持ちをカバーするためか珍しい半透過型の液晶モニターが搭載されています。つまり、他のデジタルカメラのように液晶モニターの表示を完全に消すわけでは無くバックライトのみ消灯して外光で液晶モニターの表示を確認できるというものなのです。ぶっちゃけ言ってしまうと屋外での晴天時くらいでしかまともに視認できないレベルなのですが、逆に好条件時では消灯できるので光学ファインダーの無いこのFinecamでは大きな利点になるかもしれません。
他には半透過型だからなのかそういう画づくりなのか分かりませんが、表示される映像はコントラストの低いダイナミックレンジが低いものになりがちです。液晶モニターで撮影画像を確認して彩度が足りないと判断して彩度を増やしたらコッテリになっていたということがあるかもしれません。



天面
幅が非常に薄いことが分かります。スイバル式という特性上底面にボタンはシャッターと電源ボタンしか付いていません。
フラッシュは意外にも結構大きめなサイズのものが付いています。



KYOCERA 3X ZOOM LENS
3.2MEGA PIXELS  f5.8-17.4mm

京セラブランドの3倍インナーズームレンズを搭載です。薄型デジタルカメラですがスイバル式でスペースがあるので屈曲形レンズではありません。
なぜかレンズシャッターの類のものがなく、常にレンズ表面が剥き出しという怖い状態です。コニカのKD-200Z/210Zなんかでもこういうのはありましたが…
ちなみに兄弟機であるCONTAX SL-300RではCarl Zeiss Vario Tessar T*というカール・ツァイスブランドになり、専用フードが付いています。スイバル式ということでネタレンズか取り回しの良い性能の低めなレンズが使われていると思ったら、そのまま?カールツァイスを名乗れるだけあってレンズ性能はカタログで謳われている通り低いものではなく(中心解像度 200本/mm以上)逆光などの悪条件ではなければしっかり解像しているのですが、何しろ極小センサーのザラザラ感と解像度優先ではないRTUNEによってぼんやりとした写りになってしまいがちなような。特性を理解して上手く使いこなせばシャープな画を得ることが出来そうですが…
レンズ解像度は画素数が低いこともあって文句無しなのですが、20cmと寄れないうえに焦点固定と弱いマクロには大いに不満ありです。せっかくのスイバル構造の何割かを損しています。ニコンのスイバルシリーズ(というよりスイバルという名前はニコンのもの)はマクロがかなり綺麗でCOOLPIX 900シリーズのマクロは総じて優秀だったみたいなので。






KYOCERA Corp. JAPAN
ASSEMBLED IN CHINA   PART MODE IN JAPAN
DC 5V

社名表記の他に部品は日本製、組立は中国というよく分からない表記がされています。どの部品が日本製なのかなどは不明ですが海外製のパーツを寄せ集めて日本製とするよりはよさげです。日本製の部品とは普通に考えたらKYOCERAブランドのレンズ系だとおもいますが…
想定していないのか何故か三脚穴が存在していません。こういうカメラこそ三脚穴で固定してアート的な撮影…には使えないでしょうか? 



電池は専用リチウムイオン電池であるKYOCERA BP-780Sを使用します。

KYOCERA  RECHARGEABLE  BP-780S 3.7V 780mAh
LITHIUM ION BATTERY PACK
KYOCERA Corporation  MADE IN CHINA

持たないと言われ続けているこのFinecamシリーズの電源ですが、電池はそこそこ容量があるので原因は本体の消費電力のようです。ちなみにACアダプターの繋いでの本体充電なので充電器は不要です。



撮影状態でMENUを押したところ
撮影に関する項目が並んでいます。この方式は他にもソニーがサイバーショットシリーズで採用していましたが、いつの間にかやめてしまいました。このUIはコニカKD-300Zなどといった他社に供給したデジタルカメラにもそのまま搭載されています。使い易いかは人次第だと思われます。


画質というより発色はかなり独特な京セラ発色です。彩度が高くないが再現性はそこそこみたいな…
CCD素子も大きくなく、特別画質重視なデジタルカメラではないですがレンズ能力は低くなく、決まれば目が覚めるような画を撮れました。画像処理エンジンも十分進歩しており、画素数にさえ眼を瞑れば現在でも使えそうです。画像処理エンジンは当時アメリカと日本で事業を展開していたNuCORE Technolog社のCleanCaptureを京セラ独自にチューニングしたと思われるRTUNEが搭載されているます。このCleanCaptureというのはOEM先に販売する際の名称であり、画質の調整などは供給先に任せるとなっていることからRTUNEが独特の画質になっていることも分かります。そして高速画像処理のおかげかメニューの操作などはかなり早く、撮影した画像を拡大するスピードと滑らかさと気持ちよさは他の機種にないかもしれません。エンドレス連射もRTUNEによるものなのでしょう。
解像度は高い方ではない、暗所には比較的ノイズが出るなどといった豆サイズ撮像素子を使ったコンパクトデジタルカメラの特徴がありますが発色は富士フイルムとは反対なCONTAX風味である程度はしっとり感も得られると思うので作品創りには向いているかもしれません。さらにコンタックス風味を得るためにはTvs DIGITALあたりを使うのがよさそうですがCCDリコールなどといった障害が多いのです。

KYOCERA Finecam SL-300R

メーカーKYOCERA
KYOCERA Corp. JAPAN
原産国ASSEMBLED IN CHINA / PARTS MADE IN JAPAN
発売2003/10/10
メディアSDカード/MMC
センサー334万画素 1/2.7型 CCD 原色フィルター
レンズブランドKYOCERA 3X ZOOM LENS
レンズ構成6群7枚
画像エンジンRTUNE
手ブレ補正なし
光学ズーム3倍
電池BP-780S (3.7V/780mAh)
ファインダーなし
バージョンVer 1.04→Ver 1.05
価格オープン (4万円程度)
その他スイバル式、エンドレス連写、半透過型液晶

ISOAUTO/100-800
F値F2.8(W)-F4.7(T)
圧縮率ファイン/ノーマル
動画VGA AVI 30fps (メモリ容量の続く限り撮影可)
MFなし
GPSなし
タッチパネルなし
容量上限2GB使用可能
カラーモードなし
ストロボ内蔵
ドライブ動画/エンドレス連写/静止画


ファームウェアのバージョンアップが公開されておりますが内容はプレビュー画面で白とびっぽい表示になる症状を改善、新世代のSDカードに最適化と結構重要な内容なので更新をオススメします。
検索する際はCONTAX SL-300R T*ばかりがヒットするのでFinecamの文字を入れると良いでしょう。


 (余談)

兄弟機でほぼ変わらないということでCONTAX SL-300R T*のファームウェアをFinecam SL-300Rに入れたりすることができますw とっても京セラの使用許諾に反しているだけではなく、ファームウェアというデジカメのソフト面で一番大事なものを壊す恐れがあるのでやらない方が良いです。更新はファイル名を書き換えてFinecam SL-300Rのものと同じ名前にすればできますが… 起動画面が画像のようにCONTAXになるので、自分で本体部分に革を張ればT*気分になるかと。
SL-300R T*はCONTAXブランドでレンズがCarl Zeiss Vario Tessar T*に変更されている以外に画質面では何か違いはあるのでしょうか。

余談・さらに追記

2015年4月31日 唯一の京セラカメラサービスセンターである京セラ岡谷サービスセンターが閉鎖したことにより京セラのカメラアフターサービスがすべて終了し、CONTAX 、KYOCERAどちらのカメラもバッテリ―含むアクセサリー販売、修理・メンテナンスが完全終了したことによりカメラのページは閉鎖されてファームウェアのアップデートも出来なくなりました。何とか一部機種はウェブアーカイブスに潜れば入手できるみたいですがいつまでできるやら…
完全撤退して丸10年面倒を見続けたのですからかなりスゴイ会社と言えるのではないのでしょうか。デジタルカメラに関しては製造終了してから10年ほどなのですが、コンタックスのNマウントツァイスレンズは限界があるものの数十年とサポートを続けていたのでかなりすごいです。




価格:525円(本体、ACアダプター、取扱い説明書、電池) 
状態:時計リセット





2016/03/06 画像追加




それにしてもこの花柄シールは謎の品です。調べてもそれらしき情報はなく、Stream Shotという単語すら出てこないのですがキャンペーン品か何かでしょうか。
このモデルはCONTAXではないのでCarl Zeiss Vario-Tessar T*ではなく、KYOCERA ZOOM LENSなわけですが、CONTAXファームが入った状態での撮影画像を見てみるとFinecam SL-300Rよりノイズが減っているように見えますのでCONTAX画質になったといえるかも?壊滅的に電池が持たず50枚ですら精一杯という状況ですがあまり見かけない京セラ画質ということで持ち歩いていることも多かったりします。



9 件のコメント:

  1. ジャンクカメラの修理などが好きでこちらへ辿り着きました。SL300は懐かしいですね。自身も300が3台と400が1台所有していますがデザインもいいですし、作りもしっかりしていますよね。本体シールに関しては販売キャンペーンで貰った記憶がありますが1枚のシートに6パターン位のカラーリングのシールがあったように記憶しています。(古い記憶の為曖昧ですが)

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    1. コメントありがとうございます。
      京セラのスイバル機はメーカーとしては後発なのですがFinecamもCONTAXも高級感があって完成度が高くて良いですよね。SL400については一度見かけたものの運悪くCCD不良の対象で故障していたので入手なりませんでした。このシリーズはスイバルの感触も良く、ついつい回転させてしまいます。
      シールについては販促品だったのですか。Stream Shotという言葉がカタログにしか記載されていない言葉だったので販売時の何かだったと思ってはいました。
      ジャンクに付いては結構故障品を分解したりしているのですがHDDクラッシュによる画像消失で、後日撮りなおしたボディ画像しかないので控えめになってしまっていますのでもう少し何とかネタを増やしてみようかと思います。

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    2. SL400についてはCCD不良でリコール対象であった為に問題を抱えた機体が多いのでしょうが、とはいえ300でもCCD不良は発生していたのにこちらは対象外だった為にどちらも難有りの品が多いようですね。確かに当機のスイバル機構の感触は良く『カチッ』と水平位置で止まる感じは作りの良さを実感します。古めのモデルではSonyのU20といった小型のカメラなども最近は使用する機会が減りましたが見た目に反してしっかりとした作りの為に今でも現役です。

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    3. SL-300Rでもセンサー不良が起こりやすいのですか。確かに当時の300-500万画素級な1/1.8型や1/2.7型のセンサーは不良を抱えている場合が多い記憶があります。同じスイバルはサイバーショットDSC-F77なども好きです。
      SLシリーズについては結局光学ファインダーが無く半透過型液晶モニターを使うのですが、このモニターが曲者でコントラストや色味が全く分からないという特性なので苦労した覚えがあります。やたらアンダー気味でアンダー部には色が乗らないという特性には慣れました。

      小型カメラといえばIXY DIGITAL Lが小さいのに高画質で持ち歩いていた事が多かったです。単焦点レンズの為かシャープに綺麗に写るのがお気に入りでした。

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    4. SL-300Rでもセンサー不良は数多く発生していました。当時の製造技術によるものだと思われますが、400のリコール時に300についても所有者から相応の反応があったはずですしメーカー自体もある程度把握していると思われますが、そこは割り切って判断したのでしょう。このメッセージを機に300、400を引っ張り出して使用してみようと思っています。バッテリーが心配ですので先日購入した外部電源で駆動させるつもりです。こちらの外部電源は10年以上前に所有していましたが利用機会がなくなり捨ててしまいましたがヤフオクで発見し購入しました。古いカメラでは電源用の端子が装備されていますので使用出来ますが、同時に最近のデジカメでは動画の性能が向上した為にデジカメで撮影する機会が増えたのですが、そうなるとバッテリーの残量が気になる事もありこの商品とDCカプラーで撮影に臨む事を計画しています。詳しくはヤフーBoxにて写真を公開していますので古いカメラを扱う際の参考になればと思います。

      http://yahoo.jp/box/9EOFqt

      検索窓ではなくアドレスバーに貼り付けてみて下さい。

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    5. 検索窓への貼付でも大丈夫なようでした。

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    6. 画像拝見しました。ガングリップのXactiがいい感じです。
      その商品はジャンク扱いで何度も見かけたことがありますが、結局購入しないうちに無くなってしまいました。ですが、こちらでは大電流のUSBモバイル電源に100均のPSPパソコン充電ケーブルで同じような事を行っているので電源は問題ありません。
      京セラ機は本体充電タイプなのでこれらのケーブルを使うと充電もできて便利です。

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    7. 写真でお奨めした外部電源については、自身も以前は同様に100均のPSP用のケーブルを使いモバイルバッテリーにて駆動させていましたがバッテリーを胸ポケットにしまいながらなどの撮影では取り回しに不便さを感じていましたのでこちらのページを閲覧される方の参考にでもなればとの思いでした。こちらの投稿を機にヤフオクの取引き状況を見てみると過去数ヶ月の履歴などに於いても2、3年前よりも値段がついているような状況でした。contaxブランドは相変わらずの人気ですがkyoceraについてはそれ程でもなかったのですが、ここへ来て程度の良い機体の流通量が減ったのが原因かと思われますが、とかくカメラなどでもカタログスペックばかりが語られる事が多いと感じますが持っていて楽しくなるようなカメラについても改めて脚光を浴びているようで少しうれしく思いました。カメラ好きには高価格帯のプレミアムコンデジに注目が集まり、それ以下の価格帯ではスマホなどの普及で苦戦を強いられているようですが、希望としてはまた面白いカメラが発売されないかと密かに願っています。

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    8. こんにちは。
      そういえばそちらの製品は三脚穴があってカメラを固定する事ができたのですね。すっかり忘れておりました。私の場合は100均PSPケーブルに大電流対応USB延長ケーブルを繋ぐことで取り回しを改善しています。

      CONTAXはとにかくプレミアムなブランドで現存しないので高価格なのは仕方がないですね。DiMAGEシリーズが結構いい値段が付いたりしますし、単にコレクターだけではなく画質を求めて古デジを購入する方もそれなりにいらっしゃるのかもしれません。知る限りではKD-510Z/500Zを10台以上買って使っている方もいました。
      面白いデジカメ… プレミアムクラスのフィルム回帰デザインならば増えてきたと思いますが、デジタルらしさの点での面白い機種というのは見かけませんね。その点ではデジタルでしか出来ないスイバル式というのもデジタルの面白さだったと思うのですが10年以上前に絶滅してしまったので仕方が無いです。コダックの自社フィルムシュミレーションなどの機能は面白い機能の1つだったのですが。
      京セラ機についてはSシリーズはゴムベルトによるレンズユニットの故障、その他はセンサー不良など弱点があるのでどんどん減っていくと思われます。それで数が減ったからといってコンタックスのように高騰しないというのが悲しいところです。

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